どうも新田です。「21世紀の自由論」という新刊のプロモーションにお忙しい佐々木俊尚氏の「黒歴史」といえば、「2011年新聞・テレビ消滅」という煽り本を出しておいて、2015年の今日、主要新聞社で潰れたところがどこもない結果に終わったこの頃なわけですが、アップルの米本社が新サービスとして今秋から展開するニュースアプリの編集者を募集していると、元新聞記者の方がフェイスブックでシェアしていたので観に行ってみたんですよ。
applelogo
■アップルの採用情報は旧メディア記者の福音か
当然ながら原文は、私が絶望的に苦手科目の英語。そういうわけで英語が堪能な元全国紙記者で、ブログ「DON」の主催者、Takosaburouさんに訳してもらった求人概要がこちら。
募集人員 13人
編集者、アップル・ニュース

求人番号:40934541
日付け:2015年6月13日

アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタ・クララ・バレー 
週平均労働時間40時間

求人概要
編集者、アップル・ニュース

アップル・ニュースのチームでは、アメリカの全国ニュースや海外ニュース、ローカル・ニュースなどを見つけ出し、最良の形で速報するのを手伝って頂く情熱的で知識豊富な編集者を探しております。こうした編集者は、プロとしての知見領域に基づくカテゴリーを選ぶ管理の仕事をしつつ、大きなニュースとなる出来事を最もタイムリーに、そして最も素晴らしく取材・制作したものをユーザーに見つけ出して貰うようにしてもらいます。

この役割には、世界で最も素晴らしい配信元の幾つかとのマネージメントを行う事が要求されます。国際的なチームと淀みなく働き、読まずにはいられない電子メールを作成して頂く為です。
そうですか。反射神経的に速報処理能力があり、情熱的で知識豊富な編集者となりますと、新聞社がつぶれまくっているアメリカでは、失業したジャーナリストの方々に福音のように一見思えます。この記事をシェアしていた知人も「日本語版の求人も始まらないかな」と期待しておりましたし、日本の新聞社に務める現役記者さんでも、オリンピックの広告バブルが弾けた後の経営危機が度々噂される毎日や産経の記者さんには希望の灯火になるのやら。。。

■モバイルとテクノロジー知見が必須
では募集資格を読んでみると。。。(数字は私が追記)
及び経験 :
①ジャーナリズム、コミュニケーションズおよび関係分野の大学士号の取得者。修士号取得者歓迎。
ここは高等教育でのジャーナリズム専攻を求めるあたりはアメリカの国情ですね。仮に日本で同様の募集をかけるとすると、実務経験者主体になりますでしょうか。
②モバイル報道配信を強化していた編集局で5年超の経験のある方。及び複数のコンテンツ・カテゴリーに詳しい知識がある方。
うぅ。。。ここで紙の記者・編集経験しかない人は脱落。ていうか日本の新聞社でモバイル強化を鮮明に打ち出しているところあるかな。。。個人レベルでもデジタル領域の知見も併せ持つ5年以上の経験者ってそんなにいないだろ。。。さらにデジタルでもPC偏重ではもう相手にされませんね。それにしても「モバイルシフト」の波を改めて感じます。
③速報配信を最適にし追跡出来るよう、様々なソーシャル・ツールの利用方法に熟知している方。
ここもデジタルメディア時代は必須。ハフィントンポスト日本版のローンチがうまくいったのも松浦前編集長のソーシャル展開の知見があったとされていることからもわかります。
④コンテンツのアナリティクスを深く理解している方。また、適切な時間に適切な人達に素晴らしいコンテンツを得られるだけの能力を有しておられる方。
ウェブアナリティクスを専業にしている人なら問題ないけど、紙の経験しかない人にはまず無理。
⑤チームでも、個人としても働ける能力を示せる人。及び非の打ち所がない時間管理の出来る方。
⑥学んで成功したいという強い欲望に力を注げるエネルギーを持った結果追求型の方。
このあたりはメディアの仕事やっている限りは問題ないかな。特に⑥が求めるところの環境適応力はオールドメディア企業からネット企業に転身するには必須の能力。
⑦デジタルニュース配信とコンテンツ管理に関するテクノロジーを深く理解なさっている方。
あー、そうですか、日本の新聞記者さん残念でした。ここも④と同様ですが、まー、そんなもの警察署や市役所とかドサ回りしかやっていない記者さんには無縁の世界。アップルの採用試験では門前払いでしょう。

■日米の新聞業界でデジタルデバイド
しかし仮にアップルが日本で同じような募集案件を出して、大手新聞や出版社から上記の資格をすべて満たす人材を集めるのは難しいだろうと思う一方で、アメリカでは堂々とこんな条件が掲げられるのはやはりデジタルへの取り組みの進度に差があるからなんでしょうかね。

NewsPicksの佐々木編集長とか市川裕康さんとか朝日新聞のデジタルイケメン古田記者とか、日本のメディア業界の意識高いクラスタではおなじみですが、ニューヨークタイムズは、デジタル時代の編集戦略を「イノベーション」と銘打ったレポート(日本語版の要約はこちら)に編纂しておりまして、編集局の中枢が悪戦苦闘しながらデジタル対応していく様が活写されております。転じて日本の主要新聞社で、ここまで抜本的にデジタルシフトを宣言する動きはまだ見られません。

とりあえず、アメリカの現時点での募集要項を見る限り、日本の新聞記者さんには用無しということなんでしょうが、古田さんであるとか、あるいは毎日新聞で孤軍奮闘しつつ、NewsPicksあたりへの転職を密かに画策しているであろう(笑)石戸記者のようにデジタル個人芸が優れた若手記者さんたちから、アップル界隈への亡命をする人が現れる日が来るんでしょうかね。皆さまのご活躍をお祈りしております。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
個人ブログ
ツイッター